5日で学ぶ統計学学習プログラム-EBM医療情報学 を通販で購入する(通信販売で予約する)

　　本書は、医学生や医学系大学院生などを対象とした臨床
　疫学・生物統計学の入門書である。もちろん、医学情報をこ
　れから学びたいというすべての人に対応できるよう、順序だ
　てた実習形式で執筆している。第１日目から毎日１章ずつ学
　習していけば、合計５日で終結する。主題に「EBM医療情報
　学」、副題に「統計学学習プログラム」と書いてあるように、
　その最終的な狙いは、統計の「いろは」をしっかりと身につ
　けた上で、MEDLINEやコクランライブラリなどを駆使し、最
　新の医学的知見を自分で導き出すことである。
　　言葉で書くのは簡単であるが、これはかなり奥の深い作業
　となる。たとえば、情報検索自体は、図書館に行ってコンピ
　ューター画面に向かい、該当するサイトやソフトから適切な
　キーワードを入力すれば、何件かヒットするであろう。操作
　法が分からなければ、担当者に聞けばよい。ところが、ヒッ
　トした論文を集めてみても、その中身や全体の位置づけが理
　解できなければ先に進まない。宝の持ち腐れとなる。
　　医学的情報が理解できない理由は、大きく３つある。比喩
　的に表現すると、１つ目は、文字が読めない人である。最新
　の医学論文は英語で書かれていることが多いため、英語が苦
　手で分からない単語が多い人は、英語の検索自体を避ける傾
　向がある。２つ目は、文章が分からない人である。何とか文字
　は追えても、その文章が専門的すぎて理解できないことがあ
　る。「The New England Journal of Medicine」や「Lancet」
　などの一流雑誌は、幅広いテーマを扱っており、さまざまな
　専門の読者が多く購読するため、ある程度の医学知識があれ
　ば読めるように、洗練された文章で書かれている。ただ、そ
　の「ある程度」がくせものである。特に医学生は、基本的な
　医学知識を早く身につけるべく日々精進してほしい。３つ目
　は、文章の是非が判断できない人である。この点が、本書の
　主題となる。論文に書かれた研究のデザインは何であるか、
　データの処理方法は正しいのか、得られた結果からどこまで
　「真実」に迫れるのか、批判的吟味をしなければいけない。
　その根幹の１つをなすのが、統計学的な「モノ」の考え方で
　ある。
　　筆者らが勤務する帝京大学医学部では、上記３つの課題に
　対応するカリキュラムを組んでいる。１つ目の英語力につい
　ては、２年生から４年生にかけて「医学英語」の講義を系統
　的に組んでいる。２つ目の医学知識の体得については、各科
　の縦割り授業を割けるために、基礎・臨床各講座が協力する
　統合講義と統合実習が集中的に行われている。３つ目の医学
　的情報の処理と批判的吟味に相当するのが本書の内容となる。
　統合実習が始まる３年生時に、衛生学公衆衛生学講座のスタッ
　フが中心に「医療情報学実習」を担当する。パーソナルコン
　ピューターを用いた演習が行われるのだが、本書はその教科
　書となっている。
　　目次を読んで頂けたら分かるように、第１日目でEBMの基本
　について説明したら、第２日目以降は、実際のデータセット
　を処理する演習形式となっている。Excelで基本的な統計解析
　ができたら、すぐに最先端の統計プログラムの１つであるSAS
（Statistical Analysis System）を用いたデータ解析を行う。
　まさに、手を動かして統計学を学んでもらおうという主旨で
　ある。そのため、説明は最小限にコンパクトにまとめている
　ので、本書で学ぶ際は、実際にSASを使いながら読み進めると
　理解しやすいであろう。ただし、SPSS（Statistical Package
　for the Biosciences）やSTATA（Stata Corporation）を用い
　ている人でも勉強できるよう、補記１と補記２に解析方法を
　補記している。この２つの章で、第３日目と第４日目のSAS解
　析と同じ演習ができるよう配慮している。